7.これからの東京の火葬場はどうなる

出典:https://www.photo-ac.com
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年に131万人だった死亡者数は2039年にはピークの約166万人に達するそうです。いわゆる「多死社会」が迫り、火葬ができずに遺体保管しなければならないことは、誰もが直面する問題になりつつあります。
7.1 公営火葬場は増えない?
東京都内には、公営・民営合わせて26か所の火葬場があります。たったそれだけの数の火葬場で年間11万人を扱わなくてはならないという現状があります。技術の進歩により、火葬時間が短縮されたとしても限界があります。
では、火葬場を増やせばいいかというと、周りの住民感情が壁となります。「必要なのはわかっているけれど、近所にできるのは困る」というのが本音でしょう。土地の取得問題もあります。住民のコンセンサスが得られない場合、公営の火葬場を作ることは不可能といってもいいでしょう。
7.2 「 ご遺体ホテル」が増える?
火葬場の数が少なく、順番待ちが深刻になっている中、亡くなった人を葬儀や火葬まで預かるというサービスが首都圏を中心に広がっています。通称「遺体ホテル」とも呼ばれています。
現状の遺体の保管場所は、葬儀場や火葬場の霊安室ぐらいしかありません。その多くが、業務用の大型冷蔵庫を使っているのです。都会ではマンション住まいなどで、部屋が狭くて遺体を連れて帰れないという人も多くいます。冷蔵庫に保管することに抵抗を感じる人もいるでしょう。そこでソファーやテーブル、空気清浄機などを完備した一室を提供する「遺体ホテル」のサービスが注目されています。
昼夜を問わず個人と面会でき、飲食物の持ち込みも可能ということで、利用料は24時間で9,000円ほどだといいます。特に行政の許認可が必要ではないため、現在は葬儀会社をはじめ、霊柩車の派遣会社、コンテナメーカーなどさまざまな業種が参入しています。
7.3 家族葬が主流となる
葬儀のあり方が徐々に変わってきています。とくに東京という大都市における核家族化、高齢化が進むなか、大勢の参列者を伴わない葬儀が増えてきました。また宗教色のない、お別れの会といった告別式も共感を持って受け入れられています。こうした流れのなか、これからの葬儀は家族葬が主流となると予想されます。
さらに、東京の抱える問題として「独居老人」があります。身寄りのない一人暮らしの老人が増えることで、葬儀場で通夜や葬儀をせずにそのまま病院などから火葬場へ送る「直葬」が増えるでしょう。そうなると、さらに東京都の火葬場不足は深刻になり、ご遺体ホテルといったサービスが必要不可欠となっていくことでしょう。
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